ブロックチェーンロールアップとは?OPとZKの違いは?
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2024-6-11 2:38

分散型アプリケーション(DApps)やトランザクション量が増加する中で、イーサリアムのスケーラビリティがしばしば問題として挙げられます。イーサリアムのブロックチェーンは、セキュリティと分散化を維持することに集中しているため、1秒あたりのトランザクション数が限られています。つまり、ネットワークが混雑したり、トランザクションの遅延、忙しい時の高額な手数料などの問題が発生しやすいわけです。
ブロックチェーンロールアップは、イーサリアムのブロックチェーンをよりスムーズにするための解決策として使用されていますが、具体的に何であり、どのように機能するのでしょうか?
ブロックチェーンロールアップとは何か?
ロールアップは、「レイヤー2」のスケーリング技術であり、取引の実行をイーサリアムのメイン「レイヤー1」ブロックチェーンから別チェーンに移します。そしてトランザクションは、より高いスループットを持つ、専用のロールアップチェーンで処理されます。
このように処理されたレイヤー2ロールアップチェーン上のトランザクションは、後に一気にイーサリアムのレイヤー1メインネットブロックチェーンへ移され保存されます。これにより、ロールアップはイーサリアム独自のシステムを維持しながら、大幅にスケーラビリティを改善させることができます。
なぜロールアップが必要なのか?
イーサリアムだけでも強力なブロックチェーンであるにも関わらず、なぜロールアップは必要なのでしょう。イーサリアムは言わば最古のチェーンの一つで現在ほどの取引ボリュームに対処できるように作られていなかったのです。そのため3大ジレンマと呼ばれる問題が発生しています。
そしてロールアップを採用することで以下のような利点が見られます:
- トランザクション手数料(ガス料金)の大幅な削減
- 大幅に改善された高トランザクションスループット
- アプリのユーザー満足度の向上
- イーサリアムのスマートコントラクトおよびツールの互換性の維持
- 元々のレイヤー1のセキュリティと分散化モデルを維持
つまりイーサリアム上で時間がかかっていたことが、安くそして早く処理されるようになるといったものになります。
2種類のロールアップ:オプティミスティックロールアップとZKロールアップ
そしてそのロールアップには、主に2種類存在します。
オプティミスティックロールアップ
オプティミスティックロールアップは、「無罪推定」のモデルで動作します。基本的に全てのトランザクションはデフォルトで有効と見なされていて、オフチェーンで実行されます。
これらのロールアップトランザクションを監視する別のバリデータネットワークがあり、無効または不正なトランザクションを検出した場合、「不正証明」を提出して拒否することができます。
オプティミスティックロールアップの主な利点は、高いスループットと低遅延であり、トランザクションはオフチェーンでほぼ瞬時に処理されるため、有効性の事前証明が不要です。また、イーサリアムの仮想マシン(EVM)およびスマートコントラクトと互換性があるのも強みです。
しかし、オプティミスティックロールアップの欠点は、ユーザーが資金を引き出す際に、不正を防ぐために、約1〜2週間待たなければならないことです。この遅延は、不正証明が提出されるまでの時間として必要です。
主なオプティミスティックロールアップ
- Optimism
- Arbitrum
ZKロールアップ
対照的に、ZKロールアップは「有罪推定」と呼ばれる方法を採用し、ゼロ知識技術を使います。トランザクションが有効と見なされる代わりに、ZKロールアップでは有効性証明が生成され、各ロールアップバッチとともに提出されます。
「ゼロ知識証明」は、詳細を公開せずに、各トランザクションバッチがルールに従って有効であることを証明します。これによってノードはプライバシーを維持しながら、ロールアップトランザクションデータを素早く検証できます。
オプティミスティックロールアップと同じく、ZKロールアップもメインチェーン外から実行することで、高いスケーラビリティと低料金を提供します。さらに、既に有効性がオンチェーンで証明されているため、遅延なしで引き出しや退出が可能なことが強みです。
しかし、ZKロールアップはオプティミスティックより難しく複雑なコードを使用するため、開発が困難というデメリットもあります。さらに、現在のZKロールアップは、EVMおよびスマートコントラクトとの互換性に欠けています。
主なZKロールアップ
- Taiko
- Linea
オプティミスティックロールアップとZKロールアップの違い
オプティミスティックロールアップとZKロールアップは、根本的に異なるメリットとデメリットがあります:
オプティミスティックロールアップ
- 「無罪推定」のモデルで動作
- トランザクションは事前検証なしで即座にオフチェーンで実行
- 別のバリデータネットワークが不正なトランザクションを監視
- 不正が検出された場合、暗号学的証明によって無効なトランザクションに異議を唱えることが可能
- すべての面でトランザクションスループットと速度を優先
- 純粋なトランザクション実行ではZKロールアップに比べて高速かつ低コスト
- ユーザーはメインネットに完全に退出するまでに1〜2週間の「紛争期間」を待たなければならない
- スループットを重視するゲーム、マイクロペイメント、取引所などのアプリケーションに適している
ZKロールアップ
- ゼロ知識暗号を使用して「有罪推定」のアプローチを採用
- トランザクションの各バッチとともに有効性証明を生成して提出する必要がある
- これらのZK証明は、トランザクションの詳細を公開せずに計算的に検証
- 実行前にトランザクションを事前に検証することでセキュリティと信頼を優先
- 証明の生成によりオプティミスティックロールアップに比べてトランザクション実行は遅い
- 紛争期間なしでメインネットへの退出と引き出しが非常に迅速
- 高価値のトランザクションに対して強力なセキュリティ保証と迅速な引き出し完了を必要とするDeFiのような金融アプリケーションに適している
ゲーム、取引所、マイクロペイメントなど、トランザクションの実行速度を必要とするアプリケーションにはオプティミスティックロールアップが適しています。
高価値の資金移動を扱い、セキュリティや引き出し速度を優先する金融アプリケーションには、ロールアップのセキュリティ重視のアプローチが適しています。
どちらのソリューションも、イーサリアムのレイヤー1のスケーラビリティを大幅に向上させながら、そのコアプロパティを維持することに置いて非常に大切です。
将来の展望:ZKロールアップの台頭
イーサリアムの創設者であるヴィタリックによると、オプティミスティックロールアップは現在より成熟していますが、ZKロールアップ技術の基本的な利点により、長期的にはオプティミスティックを追い越す可能性があります、との見解を述べています
しかし、上述した通り現在のZKロールアップには課題が多く、ZKロールアップを大規模実装するにはまだまだ早い段階だとも言えます。
EVM互換性の制限を克服することも、現在のZK実装における重要な課題です。そしてScroll、zkSync、Polygonなどのプロジェクトは、あらゆる種類の一般的なスマートコントラクトを独立して実行できるzk-EVM環境を導入するために取り組んでいます。
将来のスケーリングの方向性はまだ明らかではありませんが、現段階では、それぞれどちらのロールアップにも強みがあり、イーサリアムが様々な面で使用され続けるために必要不可欠のものであります。レイヤー2エコシステムは急速に進化し続けているため、非常に興味深い分野です。